面倒臭がりと怖がり少女

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 良い気味だぜ。その不死身な体質が仇になったな。テメェらはそうやって、地面に這いつくばってる方がお似合いだぜ。天使の皮を被った悪魔さん。 「真田君、やり過ぎだよ……もう、良いんじゃない──」 「こいつらを片付けたら、次はテメェら魔族の番だぜ」 「な……何でそんな酷い事が出来るの!? 真田君はもっと……もっと優しい人かと……」 「鬱陶しいんだよ……テメェの泣きっ面」  小生を怯えるように声を震わせ、涙を流し出すアルテミスを見ていると、五年前の燃え盛る村を泣きながら見ていた自分達と何故か重なり合い、妙に腹立たしい気持ちになる。 「酷いのは、テメェら魔族とこいつら天界人だ。始まり村を壊滅させ、小生達の大切な人達や帰る場所を奪いやがって……」 「始まり村……真田君、あなたあの村の生存者!?」 「これで理解しただろ? これからも小生に話し掛けるな、関わるな、目を向けるな、視界に入るな……じゃねーと、理性が吹っ飛んで殺しちまうぜ?」  小生が睨み殺すように彼女を見ると、アルテミスは更に恐怖を覚えたのか、肩をビクッと跳ね上がらせて顔を青ざめる。  その時、彼女の事を必死に護って来たであろう御老人が、突如仰向けになって倒れる。 「じい……や?」  じいやと呼ばれる御老人の背中から、真っ赤な血溜まりが広がって行き、顔の血の気が引いて唇にチアノーゼが出現する。 「じいやっ!?」 「どうやら、お前を屋敷の外へ逃がす途中に……背中に魔物の攻撃でも受けたのだろう……ふふふ」  顔を踏みつけられているサキエルは、非常に不愉快な笑みを浮かべながらそう言った。 「あの爺さん、もう助からねーぜ」 「出血具合から見るに……致命傷だ。我ら風魔一族に治癒出来る人材は居ない……」 「そんな……死なないで! じいやが死んだら私……私……」  小生は、サキエルを踏みつけていた足を退かし、首根っこを掴んで上に持ち上げる。 「おい……あの御老人の傷を治せ。テメェなら、それぐらい容易だろ?」 「ふ……ふん、その年寄りはお前の嫌いな魔族だぞ……?」 「確かに、小生の嫌いな魔族だ。しかし、御老人ともなれば話は変わって来んだよ……治さないなら、首の骨をへし折る」 「断る……と言ったら? お前にそんな度胸──ぐふぅっ!?」  惨たらしくひしゃげる音を響かせながら、サキエルはぐったりとする。
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