919人が本棚に入れています
本棚に追加
それを確認した教頭は、満足したように邪悪に笑い、伊藤に冷たく言い放った。
「そういうことだ。
君の運命は私が握っている事を忘れないでくれたまえ」
教頭は含み笑いを浮かべながら立ち去り、明智も彼を追いかけるように続いた。
その場に一人残された伊藤は、自分の悔しさをぶつけるように木の幹を殴り付け、その場に崩れ落ちた。
その一部始終を見ていた凪は、茫然自失した状態で、フラりとその場を離れた。
どこをどう歩いたのか分からないが、気が付くと生徒会室前に立っていた。
(……土方先輩に報告しないと……)
凪は震える手で扉のノブに手を掛けた。
だがその時、決して廊下を走らない毛利が全速力で駆けて来て、凪を見付けるなり、その場に土下座をした。
戸惑う凪に構わず、毛利は叫ぶように言った。
「緒方、頼む!早苗、早苗を助けてくれっ!!」
その声を聞き付け、生徒会室の扉が開き、土方が姿を現したが、凪の視界には彼の姿はなく、身体を震わせながら必死に土下座をする毛利だけしか目に入らなかった。
そして、凪は完全に我に返った。
早苗とは、この近くにある病院に入院している毛利の妹だ。
最初のコメントを投稿しよう!