2031人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
――どうしてこうなったのだろう。
そんな自問自答を僕はここ最近ずっと繰り返している。
僕には夢があった。誰に無理だと言われようと、夢を見るなと嘲笑されても叶えてみたい夢があった。
変人と周りから呼ばれていることを知っている。
家族や親戚、挙句の果てには友達をも僕を見限っていることも知っている。
でも、そんな夢を追いかけることこそが僕の生きる糧、動力源となっていたこともまた事実だった。
故に、僕は迷わなかった。迷わず、一心不乱に槌を振り続けた。
昼夜、年中問わずカンカンと槌が金属を叩く音が鳴り響く狭い工房が僕の世界の全て。
それ以外のことは些細なことだと切り捨てたのも、また僕だ。
――だからこうなったのだろう。
時代が悪かったと、言い訳するつもりはない。
浮かれて、周りに見せびらかした僕が悪いのだ。
貧困の時代、各国が生き残ろうと躍起となっており、しかし下手な宣戦布告は自国を滅ぼしかねない、そんな均衡状態が続いていた。
そんな一触即発の中で、僕の“夢”はいい起爆剤となったのだ。
僕は昔から本を読むことが好きだった。
鍛冶職を営む家系ではあったのだが、本を読むこと自体は家族からも勧められていて、鍛冶職を学ぶ片手間で本を読み続けた。
だが、その本は全ておとぎ話のような“夢”のような物語のものばかりだった。
僕は……こういう世界が好きだった。
今の時代のような野蛮な噂ばかりが飛び交う世の中じゃない、美しく夢にあふれた世界観が好きで、それはいつしか憧れへ、そして渇望へと変わっていった。
僕は考えた。
この物語に登場する“魔法の剣”を創れないだろうかと。
一振りすれば炎が舞い上がり、突き刺せば大地は肥え、水が湧き上がる、そんな“魔法剣”。
無理なことだって、周りから言われなくても自分で気づいていた。
でも、この渇望を潤す術を僕は創るという気持ちでしか知らなかった。
最初のコメントを投稿しよう!