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その夜。
私は師である前田慶次の弟子になった時に貰った金の大煙管をすって満月を眺めていた。
金の大煙管は最初の頃は持つことがやっとだったが今では懐に携えるほどになった。
前田慶次は満月を見ながら酒を呑むのが好きだった。
私は彼が何を思って月を見ていたのかさえ解らなかった。
成り立ての頃はまだまだ小さなガキだった。今では前田慶次にも劣らない大男となったが前田慶次には全てにおいて勝ることが出来ずに終わってしまった。
「慶次殿。あなたの傾いていた姿を見たかった」
彼が満月に向ける目はなんとも悲しそうだった。彼は前田慶次にたいして父とも呼べる存在であったが為に彼の心には大きな穴があいてしまった。
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