天下一の傾奇者

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馬は風のように速く彼でさえ、振り落とされそうになった。 「なんて速さだ! お前なら松風の名を継いでも伊達じゃないな!」 彼は馬に松風と名付けた。恩師である前田慶次の愛馬の松風の子、この馬が名を継ぐのは不思議ではなかった。それには氷村の思いもあった、師のようになりたいから松風と名付けたのも少しあった。 夕方には二国ほど通り過ぎ、見知らぬ山に来ていた。 「弱ったな、こりゃ迷ってしまたぞ。」 松風から降り、氷村は辺りを散策していた。獣道でもないかと探しているが見付からない。 「!」 氷村は突然、後ろに跳んだ。その直後、彼が跳ぶまえにいた所には刃が刺さっていた。 「山賊か?」 「おうよ!」 長い髭をはやし、刀を振ってきた者のほかに八人ほどが氷村を囲んでいた。 「金と刀おいていきな」 氷村より少し背が低い山賊たちは数で有利にたち、へらへらと笑いながら刀を氷村に向けた。 氷村は金の大煙管をすい、耳をほじくり言った。 「なんだって? よく聞こえないぞ!」 彼の言葉に山賊たちは笑った。 「もう一度いうぞかぶき者よ! 金と刀おいてけよ」 背後から刀を突き付けながら山賊は自信満々に氷村に言った。
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