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「あぁ? なにか言ったか。」
氷村は煙をその山賊にはきかけながらからかうように言った。
「この野郎!」
辛抱たまらず山賊は刀を振り上げた。だが、氷村の大煙管が刀ごと彼を叩きのめした。
「この野郎! やりやがったな!?」
他の山賊たちは氷村の突然な攻撃に驚いた。
彼は背中を向けて逃げ出したのだ。山賊たちは彼を追い、森から飛び出した。
「どこに行きやがった!」
「こっちだ。」
氷村は右手に朱槍と左手に刀を持って山賊たちを待ち構えていた。
山賊は彼を囲み、一斉に斬りかかった。
山賊の怒号のなかで氷村は目にも止まらぬ太刀行きの速さとそこに籠められた力は山賊たちの鎧すらたたき割り、首が飛び、胴体が落ちた。
猛獣なみの剣であり槍捌きであった。
この刀法は前田慶次が名付けた[殻蔵院一刀流]どんな型もなく、速さと力だけが勝負を決する戦場の刀法である。
刃についた血を振り落とし、氷村は刀を鞘に収め、朱槍に鞘を被せ、松風にのせた。
「松風。これが戦だ、分かったか?」
松風は喋ることは出来なかったが氷村は松風の心を読み取ったように笑みを浮かべ、毛を撫でた。
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