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「さて、どうするか?」
道をいっても同じ場所に戻ってきてしまう、氷村は遭難したようだ。
松風にいっているのか、松風はなにも言わず、ただ前だけを見ていた。
その先には修行僧の者たちがこちらに経をよみながらこちらに向かってきていた。その先頭には帽子を深く被り、顔が見えない僧がいた。氷村は無意識にその者に話しかけていた。
「おい、あんた。道に迷ってしまって困っているんだ。」
「お主。名は?」
それはかすれた声で女とも男とも判断しにくかった。
「氷村盛昌だ」
氷村盛昌(ひむらもりまさ)と名乗った。
すると僧は森の中を指さしてこう言った。
「向こうにお主の求めているものがある」
「?」
それだけをいうと修行僧たちは足早くその場を去ってしまった。意味がわからない氷村は見えなくなるまで僧を見ていた。
「どういうことだ?」
煙管をくわえ、ぴこぴこと動かしながら松風に乗った。
何となく、行きたくなった。かぶき者の性か、氷村は僧が指さした方向に向かっていた。
四半時ほど行くと、松風が頭を下げてやっと入れるほどの洞窟があった。
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