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「それでね、その時――」
「英治っ。」
向こうから時子が走って来る。
あーあ……
俯いて気づかれないように自嘲する。
時子は英治の彼女で私の親友。
英治は時子の彼氏で私の好きな人。
英治と時子と私は高校のときからの仲だ。
彼らが付き合い出したのは大学に入ってから。
そのときばかりは同じ大学だということを恨んだりもした。
でも二人とも私の大切な人たち。
……そんなの所詮綺麗事なのかもしれない。
それでも私は二人の仲を壊したいなんて思ったことは無かった。
だって、ほら……あんなに幸せそうに笑うんだもの。
私の入る隙間なんて無い。
「じゃあ由美、またね。」
「うん。」
時子は笑顔のまま私に手を振って英治と肩を並べて行ってしまった。
それを言いようのない気持ちで眺める。
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