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ふと、右隣りに人の気配。
見なくても誰だか分かるその人に目線は彼らに向けたまま小さく笑う。
「英治が好き?」
春樹は唐突に始める。
「好きよ?英治も時子も。もちろん春樹も。」
春樹とは大学に入って英治の後輩として知り合った。
「由美さん分かって言ってるの?」
「何が?」
春樹のふって笑う音が聞こえる。
「相変わらず頑固だね。……好きなんでしょ?男として。」
「言えない。」
一拍も置かずに答える。
英治を好きだとは言わない。
例え、そうだとばれてしまっても言っちゃいけない。
言葉にしたらきっと止められなくなる。
「そ。」
「うん。」
「ごめんね。」
沈黙の後私は小さく言う。
「何が?」
「ううん。何でもない。」
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