鬼百合伝奇(1)

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 日が落ちる。薄暗く迫る夜がすぐそこにある。夜はまるで彼女を急かすようにぐんぐんと色を進め、獲物を追い立てる獣のように容赦はない。 「凛、どうした?」  夕暮れの空を眺め、立ち止まる凛に少年が問いかけた。さほど珍しくはない、彼女はいつも夕暮れはどこか物憂げだから。 「ううん、なんでもないよ」  行こう、と笑みを浮かべて凛が先を歩く。思いの外、今日は学校を出るのに時間がかかった。  近道である神社を抜けようと提案したのは凛で、特に断る理由もないのでそれにのった。もちろん早く帰るに越したことはないのだ、最近は田舎も物騒だときく。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加