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……ーー
あれから咲とわかれ、零次はそのまま旧校舎の空き部屋にいた。
何となく零次はこの部屋が気に入っていた。
『おい、少年』
零次の後ろから咲とは違う声がした。
「あ、あん時の猫公」
零次が振り返ると朝方会った猫が、足元にお座りしていた。
『やけに清々しい顔してるじゃないか?』
猫は零次の顔をマジマジと見ながら言う。
「そうか?」
自分ではいつもと変わらないと思っていた零次は首を傾げた。
『はは~ん。
恋だな』
零次の肩にひょいっと乗っかり猫は言う。
「な、な、な、何いってやがる!」
猫の発言に零次は恥ずかしさのあまり吃った。
『照れなくていいさ。
恋はいいよ、恋は。
発情期のメスは堪んないねぇ~』
そう言うと猫は変な鳴き声で一声鳴いた。
「猫と一緒にするな」
変な声でないた猫を見て零次は怪訝な顔をする。
『ところで、お前女川 咲に接触したのか?』
真面目な顔をして猫は零次に尋ねる。
「あ?
成り行きでな」
零次はまるで全てを知ってるような言い方をする猫を不審に思いながら答えた。
『ちょうどいい』
ひょいっと零次の肩から降り、猫は零次の前に無造作に置かれている机の一つに飛び乗った。
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