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「ほう…それはとても愉快なAliceだね」
カチャ、と紅茶を手に取る。
「何処がだよ…時間ないって言うのにペチャクチャと…」
イライラしたように白い耳を振り回し足踏みをする。
「おっと。私はの城は壊さないでくれよ、白ウサギ」
そう、ここは城。
何処の?
不思議ノ国。
今回のAliceはこのゲームに勝てるのかな?
「でも、その割には楽しそうじゃないか」
「…はっ、楽しくてたままらねぇな。今までと"何か"が違う。2つ」
椅子に座り肘をかけた。
「例えば?」
「其の†自分をAliceと気づいていなかった」
ふむ、とまた紅茶を啜る。
「其の‡アイツは、俺が連れて来た奴じゃない。自分からついてきたんだ」
「…他は?」
「バカじゃねぇのか。俺はお前の御茶会に付き合ってやってるだけであって味方じゃない。勘違いするな」
冷たく突き放す様な言葉を投げ掛ける。
それでも眉一つ、ぴくりとも動かせない。
「ああ、そうだったね」
黙って紅茶を飲み続けるだけ。
何も言わず。
言い返さず。
「ところで白ウサギ、肝心のアリスは?連れて来るからまたあっちの世界に戻ったのだろう?」
ニコニコしながら紅茶を構えた。
「あ。」
無言で白ウサギに向かって紅茶を投げた。
笑顔を崩さないまま。
「あっ…ち━━━━━━!!!!!!何すんだてめぇ!」
「それはこっちのセリフだ。」
きっぱりと言った。
「覚えてろよぉ…!」
少し涙目になりながらばんっと強くドアを開け閉めした。
「ふぅ…」
誰もいなくなった御茶会に小さなため息が鮮明に聞こえた。
「……まだ…許してくれているわけがないか…私も自惚れが過ぎないな…」
そう笑った顔は何処が寂しげで悲しげだった。
ハート女王がする筈のない顔だった。
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