──夏はまだ、始まったばかりだ──

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「かな、かな、焼きそば食べようよ!あ、たこ焼きもいいな!」 「私は杏子飴がいいなぁ。あ、チョコバナナもおいしそう!」 小学校に入って最初の夏休み、渡のパパと三人でお祭りに行ったっけ。 「あっ!見て、かな!花火だよ!」 「ほんとだ!すごくきれい…」 「ほらっ、行くよ!かな!あっちの方がよく見えるって!」 そう言って私の手を引く渡と、そんな渡に着いて行くのが心地良かった私は、私のおばあちゃんが縫ってくれたお揃いの浴衣を着てた。 「かなとおそろいなら着てもいいぜ!」 「私も、わたる君と一緒のがいいな」 あの頃の渡は、まるで女の子みたいな可愛い顔をしてて、勘違いした私のおばあちゃんが、生地が余ってたからと女の子の浴衣を二人分縫ってしまったのだ。
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