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俺は アイツが嫌いだった。 アイツだけじゃない。 母親も父親も 教師も同級生も どいつもこいつも 気にいらなかった。 学校を サボって 病院の個室で チューブや コードに ガチガチに繋がれた アイツのカラダを 見下ろして どいつもこいつも コイツと同じに なっちまえばいいのに、と 妄想した。 あの頃の俺は 小学生と間違えられるくらい 貧相な中学生だった。 いつでも不機嫌に 陰気な気分を発散していて、 両親も教師も 同級生の不良生徒でさえ 俺が機嫌を損ねると 徹底的に執念深く 陰湿な報復をするコトを 知っていた。 陰で 俺のアダ名は 《呪い人形》だった。 学校でも家でも 俺に関わろうとするヤツは いなかった。 俺の母親は 俺が 小学生の時に 堪えかねて ココロを病んだ。 そして 家庭を放棄して、逃げた。 俺の父親は 自分の妻が行方不明のまま 離婚すら 成立していないのに 若いシングルマザーを 家に引き入れていた。 そのオンナは 俺の父親と ある種の[契約]を 結んでいたらしく、 とても事務的に 家事をした。 ゴミ袋のゴミだけは きちんと 収集日に捨てていたが 絶対に 俺の部屋の掃除なんか させなかったし ヤツが作る料理は 食事ではなくて ただの [エサ]だったし 同じ家に 暮らしてはいたが、 俺にとっては 単なる 使用人に過ぎなかった。 学校でも家でも コミュニケーションは 最低限でよかったし、 毎晩、 父親の部屋から オンナの呻き声が 聴こえるコトなんか どうでもよかった。
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