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この『シリア・メイ』と名乗った女性は、目はその優しさと穏やかさが現れているかのような垂れ目。瞳の色は宝石のような翡翠色。
桃色の髪を肩まで伸ばしたボブヘアーに、両腕で抱き締めれば包み込めてしまいそうな小柄な体格の可愛らしい女性だった。
体型は……可もなく不可もない……いわゆる発展途上である。
「~~~~~~っ!!!!」
意気込んで憧れの人に話しかけた結果ガッツリ噛んでしまい、シリアは顔を真っ赤にして俯き、小さな声にならない声で呻いていた。
「おー、そっか。ありがとな。色々大変なこともあるだろうが、まぁ頑張んな」
ウェンはそう言って俯いている頭を撫でてすれ違っていった。
「あ……は、はいっ!!」
正直、噛んだ事を笑われるかもしれない、下手したらZランクという雲の上の存在からしたら私の事なんて視界にすら入らないかもしれない、そんな不安を感じながらの行動だったがその類いの心配はどうやら不要だったらしい。
シリアは勢いよくウェンの背中に頭を下げた。
ウェンの後ろの方では
(よかったじゃないシリア!!憧れだったんでしょ?)
(う……うん……。グスッ…………)
(ちょっ……シリア!?何泣いてんの!?)
(だって……嬉しくて……うぇぇ……)
そんな会話が聞こえてきた。
「いやぁ~、いつの間にやらなんかオレ人気者になってんじゃねえか。悪い気しねぇなぁオイ」
『…………よかったじゃないか』
ヤトナの言葉はなんか普段よりも刺々しく聞こえた。
「…………ヤトナ?なんか機嫌悪くなってねぇか?」
目的の部屋へと歩を進めながらいつもの様に自分の影へと話し掛ける。
木製の床をコツコツと底の厚い靴が音をたてた。
『さぁな。気にする必要無いだろ?お前はファンの女性に鼻の下伸ばしてろ』
「あぁ!?オレがいつ伸ばしたよ!?」
ちょっとばかし不愉快そうにウェンが怒鳴る。
『現在進行形で伸ばしてたぞ。このドスケベ』
そう言ってヤトナは強引に会話を切った。
その後いくら喋りかけても返事は返ってこない。
機嫌を悪くしてしまったようだ。
オレなんかしたっけ……?とウェンは歩きながら首を傾げた。
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