滅却の神狼

―プロローグ―

｢そんじゃあ行くか。ヤトナ｣

『ハイハイ』

ウェンがそう一声かけると、ヤトナはトプンと音を立てて主人の影の中へ潜り込む。

とっとと行くぞ、と急かすゲインに煩わしそうに返事をすると、肩にかけたバッグを改めて背負い直してギルドを出る。

「みんな、行ってくる。元気でな」

ウェンは振り返って名残惜しそうに手を振り続けるギルドメンバーへ片手を振って挨拶し、全身に魔力を込めた。

　《転移(テレポーテーション)》

一瞬の浮遊感の後、ウェンとゲインの二人は柔らかな光に包まれて転移した。