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三人は高音と暖かな白い光と共にカルミア学園の近くの路地裏に転移した。
転移の衝撃に浮かび上がるリュックサック、ずしんと肩に重みがかかる。
「おし、着いた着いた」
『こっからでも大きさが分かるぞ。迷いそうだ』
「まぁ王立だからな」
順にウェン、ヤトナ、ゲインが手元の荷物を確認しながら、遠くに見える学園を観光客のように眺めながらのんびりと感想を口にする。
遠近感を狂わせる程の巨大な建造物。
周囲に建ち並ぶ高層ビルが小さく見えてしまうほどだ。
「ちゃっちゃと行こうぜ。初日から遅刻とかシャレになんねぇぞ」
「おう」
『………ん!?おいおい待てツインバカ!!』
忘れ物のチェックを終えてズカズカと細い路地から出ようとする二人の襟首をヤトナが影の手を伸ばして掴んで止める。
ガクンと唐突に引っ張られた二人は同時に足元に視線を落とし、眉を寄せた。
「「なんだよ?」」
『なんだよ?じゃねーよ!!頭を隠せバカ!!町中を耳出しっぱなしで行くつもりか!!』
「「…………あ」」
ヤトナに影の中からそう怒鳴られた二匹はお互いの頭の上を確認する。
何も隠していない二人の頭には当然、獣人の証でもある獣の耳がピョコンと飛び出ていた。
「危ねェ危ねェ」
「全くだ」
ウェンは頭を覆うように黒のタオルを後頭部で結び、ゲインは白のキャップをかぶった。
「よし、今度こそいこう」
「おう」
短くそう言うと二人は何事もなかったかのように肩を並べて路地裏を歩いてった。
『こんなんで《亜人》と《滅却の神狼》と《戦魔の獅子》……この事実を隠せるのかねぇ……もう心配になってきた』
ヤトナの影の中のつぶやきは誰にも聞かれる事はなかった。
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