砕氷の戦慄

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――国会議事堂―― 「伊田議員の発言についてお答えいたしますが…」 屋嘉総理大臣!!トロい!!、と野次が飛んだ。つい先ほどまで身も震えるような書類を目にしたばかりだ。流石に体に応える。 …ドーン 国会に不気味な低い爆発音が響く。屋嘉は舌打ちした。せっかく総理大臣という重大なポストについたのに、面倒くさいことが起きたと感づいた。少し恐怖も感じた。 照明が消える。前よりも大きな爆発音と、立てなくなるほどの揺れが国会を襲った。ついさっき自分に向かって野次を飛ばした男がガタガタ震えていた。しかし、それをあざ笑うことができるほど、屋嘉は冷静にはいられなかった。 瓦礫が落ちてくる。火は辛うじて出ていない。屋嘉は懸命に身を守った。 揺れが収まり、机の下から出る。上に青空が見えた。 机の上の書類は全て消えていた。 血を流している人もいる。皆、外に誘導された。点呼が始まった。既に一応、全閣僚の無事は確認できた。怪我人がでているようだ。「えー、伊田議員。………伊田議員?誰か伊田議員がどこにいるかご存知の方はいらっしゃいますでしょうか。」 伊田議員はどこにもいなかった。 「国会議事堂爆破事件」は負傷者48名を出した。犯人は未だ捕まっていない。屋嘉は、無意識のうちにまた舌打ちした。部屋に戻る。部屋に異変があった。すぐに金庫に目が移った。金庫は無惨にも開けられていた。機密書類が消えていた。 屋嘉はこの事件の目的を悟った。
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