序章~この境遇に至る経緯~

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さて、ここまでなら、ただ単におかしな夢を見ただけと論じれば二の句はない。 今回の事件は、さらにその夜、就寝後に本格化を見る。 学院での授業を終えて家に帰り、疲れと寝不足に任せて寝床についた私は、再びあの暗い無機質な空間で目が覚めたのだ。 その時、私は昨日のことを覚えていた。 自室で目覚めた時に、あまりに鮮明に記憶にあった夢だから、一日中頭から離れなかったのだ。 私は二度目のその空間で、再びこの夢か、と頭の中で呟いた。 しかし、あまりに奇妙であった。 意識が鮮明すぎる。 今までの夢とは明らかに違う。 「こんにちわ、特別な方」 暗闇から声がする。 子供か大人か、男か女かもわからない声だった。 「誰だ」 「誰だ、ですか。その問いに答えるのは極めて難しい」 まったく理解し難い今の状況に、私は躊躇や恐怖に勝る、個人的好奇心を感じた。 「ではその質問に答えるのは後でいい。一つずつ整理していきたい。ここは私の夢の中に間違いはないな?」 「さぁ」 「ふざけないで頂きたい」 「貴方は勘違いをしています。私は確かにこの空間にずっといますが、この空間のことをなんでも知っているわけではありません。まず、私は貴方の夢の中の住人だという自覚を抱いたことなど、毛頭もございませんから」 「なるほど、確かに。夢の住人が自分や夢のことを把握しているなどという確証はない。では、改めて問おう。ここは、どこなのか」 「残念ですが、私にはわかりません。考えたこともございませんし、私にとってはどうでもいいことなのです」 「では、あなたはここで何をしているのか」 「私は、私のすべきことをしています」 「仕事か」 「それは貴方たちの言葉ですね。私には当てはまりません。私は、私だから、私のすべきことをしているのです」 「ふむ。では具体的に、貴方のすべきこととは何なのだ」 「眠りについた貴方たちの意識をここに連れてきて、全ての記憶を落として一つの海と化した後、別人の記憶の海に落としてその記憶を記憶させる。そしてその別人の体へと意識を案内するのです。この作業は、私と同じような存在が、全ての意識を持つ存在に対して行っています」 「なるほど、少し待て。理解が難しい」 私はなんとか頭の中で彼の言葉を理解しようとした。
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