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「艦長、捉えました。あれです」
「おおっ! 遂にか……長い旅だった」
前面のモニターに大きく映し出された青い星は、先祖の星【地球】に酷似して美しかった。
「はい。これで、宇宙船の中で世代交代を続けた1万年の旅に、やっと終止符が打てそうです。探査船の発船指示をお願いします」
「うむ。そうしよう」
直径6㎞の円盤型の母船は減速を開始した。
100時間後に探査船より報告が入る。
「艦長、変です。植物は繁殖していますが、動物が居ません。それと気温が358Kと高めです」
「ということは?」
「摂氏85度です。つまり、この気温では高等生物は住めません」
「うむ、やはりか。我々が近づいても警告が無かった訳だ。空気の組成はどうなってる?」
「窒素70%、二酸化炭素20%、酸素10%というところです。あっ! 土の中から何かが現れました。こちらへ来ます」
「なに? それは人類か?」
「巨大な蟻のように見えます。録画して送信します」
「いや、すぐに引き返せ」
「うわあーっ」
その絶叫を最後に交信が途絶えた。
「どう思うね?」
「気象の変動で殆どの生物が死滅したのでしょう。恐らく人類は……」
「人類は?」
「他の星へ移住したと思われます」
―了―
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