第一章

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「今日の杏は何か変だぞ」 「そんなことないけど……」 「いや、無理しないで家で休んだ方がいい。 幸い、こいつを運べば片付けも終わる」  ハルが最後の本の束をヒョイと持ち上げてみせる。  俺がぼーっと考え事してる間に片付け終わってたんだ……結局、荷物を運ぶハルの手伝いができなくて、最初から最後まで任せっきりになって申し訳ない。  そんなハルが文化祭について話したいって言ってるんだ、せめてそれだけでも付き合ってやらないと割が合わないだろ、俺。 「俺は大丈夫だからさ、文化祭のこと決めちゃおうぜ」 「しかし……」 「しかしもかかしもないって。 待ってるから最後の力仕事任せたよ」 「むっ……了解した」  我ながらちょっと強引な気もしたけど、部室を出ていくときのハルは心なしか嬉しそうな顔をしていた。  ハルも納得してくれたみたいだけど、なんか……余計な心配かけちゃったな。 「片付けたぞ」 「早っ!?」 「杏を待たせるわけにはいかないから」 「あぁ……さいですか」  考える間すら与えないとは……さすがハル。
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