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小説を作成することになってから既に二時間。
さっきと同じ長机で俺たちは自分のノートを開いて小説の下書きを進めている。
何だかんだ言っても文化祭までそんなに時間が残されていないため、部活という時間を有意義に使わなければというハルからの提案によるためだ。
「それに自宅に帰ったら杏のことだ、どうせ昼寝がオチだろう?」
……さすがハルさん。俺の行動は予測済みですか。
――と、反論できずにハルとともに筆を握ったのは二時間前。
ハルはさすが小説が好きなだけあって筆の進みが早い。
かく言う俺はというと……
「見事なまでに真っ白だな」
「うっ……勝手に覗くな!」
覗き込むハルに不満をぶつけると、やれやれと肩を竦めて自分の作業に戻る。そして直ぐ様スラスラと書き始める。
「うぅーむ……」
俺も本は好きだけど、俺の好きなのはマンガ本であって文字ばっかの本なんて正直苦手の部類に入る。そんな俺にいきなり小説を書けなんて無理がありすぎなんじゃないか?
そもそも、小説ってどうやって書くんだ? よく分からんけど、色々決まりごとがあるんじゃないのか?
「……なぁハル、小説って決まった書き方とかあるんじゃないのか? どんな風に書けばいいかだけでも教えてくれ」
「ん、漸く書く気になったか。
まぁ書き方に大きな決まりごとはない。 強いて言えば一人称か三人称視点の書き方ってやつかな」
一人称と三人称……? 何それ?
「分かりやすく説明すると……そうだな。杏の好きなマンガ本、あれは大体は一人称になるな」
「……まったく分かりません」
「つまり、主人公目線で物語が進むのが一人称、第三者目線で物語が進むのが三人称ってことだな」
……うーん? いまいちまだ分からないんですが。
「ようは、
『私は神山杏、花も恥じらう高校一年生。こんな名前だけど、れっきとした男なの』
このように、会話文以外でも一人の人間目線で物語が進むのが一人称だ」
「よし、何となく分かったから一発殴らせろ!」
確かに分かりやすいが、名前ネタを使うのは許さん! くそっ、避けやがったなッ!
「ふふっ、名前を勝手に使ったことは謝る。すまない。だが、さっきより理解しやすかっただろ?」
「うっ……まぁ、そうだけど……」
……ええい、だからそんな眩しい笑顔でこっちを見てくるなって。
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