第二章

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「ただいま……」  自宅の玄関を開けながら、いつものように帰宅の際に発する定例句を一言。 その声に反応して、奥から妹の返事が聞こえたが、今の俺にそれ以上の返事をする気力はない。  そのまま自分の部屋に入ると、すぐさまベッドに横になる。文字通り、倒れるように。  すると、部屋のドアが控え目にノックされる。返事をしないままボーッとドアを眺めていると、今度は控え目にドアが開けられた。 「……兄さん? 大丈夫か?」  これまた控え目に顔を覘かせたのは、さっき階下で返事をした我が妹。 了承も無しに入ってくるとは……今はナニもしてなかったが、状況によっては縁を切られかねん。 「うっす……兄ちゃんは絶賛休養中だ。 それと、ちゃんと了承を取ってから入らないと後悔するぞ?」 「……何言ってるの?」 「それよか、なんか用でもあるのか?」  自慢じゃないけど、妹と俺は結構仲が良い(はず)。だからこうやって部屋を訪ねてくることはあるけど、それも大体が勉強を教えるとかの理由があるとかの場合。だから今回も何か用事があるはず。 「用ってわけじゃないけど……兄さん、元気なさそうだったから……」  ……何、この可愛い妹。  今すぐ頭を撫でてやろうと思ったが、いかんせん、身体がベッドから離れてくれないため、断念する。  部室の片付けの疲労が、今になって襲ってきたんだろう。多分、いや絶対。 「そんなに学校疲れた?」 「……学校というか部活が疲れた」 「え……? 確か兄さん、文芸部だったよね?」 「文芸部だってな、身体を使うし頭も使うから意外に大変なんだぞ」 「へぇ、そうなんだ……で、何がそんなに?」 「――今月中に小説を書かねばならなくなった……助けて」 「はぁ……?」  い、いいじゃないか!妹に助けを乞う俺をだれが責められようか!
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