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「すまん。 掃除を手伝っていた」
俺以外の唯一の文芸部員、八雲春樹が昔の兵隊もビックリなくらい活発に頭を下げて簡潔に告げる。
というのも、彼のお祖父さんは実際に戦争経験者であり、その経験を活かして春樹に礼儀作法や武道をみっちり教え込んでいるんだとか。
ちなみに彼の父親は別の高校の教師であるため、勉強に関しても問題ない。 というかすごいできる。
「まぁ、そんなことだろうと思ったよ。 それより早く入ってきな?
座れるくらいに整理だけしといたんだ」
自分の隣のパイプ椅子を引いてやってそこに座るように促す。
春樹改めハルは失礼する、と堅苦しく言うと鞄を長机の上に置いて椅子に腰掛ける。
その姿勢はやっぱりというか何と言うか、真っ直ぐ天井まで背筋をピンと伸ばしている。
「部室なんだからさ、少しは楽にしたら?」
なんて言うと春樹は、
「十分にリラックスしてるぞ」
と、変わらぬ姿勢のままズバッと言い放つ。
堅苦しくって、最近の流行にも無関心で完全な硬派。
今時の高校生にしては珍しいくらい考え方が達観している。
それがこいつ、八雲春樹の性格だ。
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