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また同年六月の事だったか、急に「首都を京から変更する」という話が持ち上がった。全く予想外の事であった。
そもそも京が首都となった由来を聞けば、はるか昔の嵯峨天皇の時代の話だという。それ以来なのだから、京はもう数百年間首都であり続けた。
別に変える理由も無いし、実際問題簡単に変えられるモノではないとみんな思っていた。
それだけに世間の人達の驚きようは大変なもので、困っているようだった。その様子は見てて痛々しいほどであった。
――だけど文句を言っていても始まらないと、天皇陛下を筆頭に大臣、公卿達もサッサと摂津国・難波(現在の大阪府北部)にできた新首都に移動してしまった。
国に仕えている人等は引っ越さないワケにもいかず、官位や上司に媚びている人に至っては我先にと京都を離れていった。
一方、このたびの首都移転で失業した人達は途方に暮れながら京都に残るしかなかった。
争うように出て行った人達の残した家は日に日に荒れ果てていき、しまいには解体されて木材となり、淀川で船に載せてどこかに運ばれてしまった。
残された跡地はいつの間にやら畑になってしまった。
この頃から人々の意識が変わったようで、外出には乗馬が主流になった。華美で手間がかかる牛車は流行遅れになってしまったようだ。
また、西南にある領地が赴任地としての人気が上り、東北地方へは誰も行きたがらなくなってしまった。
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