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桜花も風に乗って去り、幾分か過ごしやすい落ち着いた日々が続いている。
ここ、桜町市も例に漏れず、青葉の季節を謳歌していた。
青々と広がる空にはぽつりぽつりと浮き雲が点在し、吹き抜けるような日陰を落としている。
街路に植えられた木々はたまに吹く風にそよぎ、車のエンジン音と相まって穏やかさを感じさせられる。
今この時季は個人的に一番過ごしやすく、一番穏やかな季節だと思う。
俺―――間宮紘人は百合乃葉学園に通っている。
百合乃葉学園は桜町市に数ある高校の中でも由緒ある学校だ。
何十年も前は女子校だったらしく名前に相応しい華やかな学校だったそうな。こほん、閑話休題。
そんな百合乃葉学園の二年生になって一ヶ月を過ごしたが、なんてことはない。一年の時と違うのは教室のある階だけ。
部活はやってないから先輩になるという実感は湧かないし、仲の良い奴とは今年も同じクラスだし。
正直、半ばガッカリ半ば想像通りといったところ。
まぁ……何を期待してるんだと言われれば口をつぐむしかないのだが。
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