自覚

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 俺が周囲と違うと気が付いたのは、16歳、高校二年生の春だった。  生真面目な俺に猥談を持ちかける者はそれまで居らず、皆自分と同じようなものだと思っていた。 「佐鳴(さなる)~、部活の後暇ぁ?うちに来ない?イイもの見せるぜ~」  新学期二週目の金曜日の放課後、後ろの席に座る進藤がニヤニヤしながら声をかけてきた。 「お?なになに?上映会か?」 「え?なに?俺も行っていい?」  男子がわらわら集まって来る。 「OK、OK。暇な奴は来いよ。じゃあ、部活終わったら校門のとこに集合な」  うちの高校は部活を終わらせなければならない時刻が決まっている。  部活を終え、校門のところへ行くと、進藤が待っていた。結局、十人を超える人数になった。 「こんなに大勢で押し掛けて迷惑じゃないか?」  気になって聞いたが、進藤は「いいのいいの」と、手を振った。 「うち共働きでさ、今日、親父は出張でお袋は夜勤なんだ。兄貴は帰って来るけど、まぁ気にすんな」 「俺は中学の頃から何度も遊びに行ってんだ」  進藤の横から顔を出した河合がキシシと笑った。河合は小学生の頃からの進藤の親友らしい。  実を言えば、俺にとって友人の家に遊びに行くという体験は、小学生の時以来。少なからず、心が浮わついている。  進藤の家は高校から近く、歩いて行ける距離だった。途中のコンビニで、それぞれ食料を買い込んで向かった。 「お邪魔しまーす」  靴を揃えて進藤の家に上がった。 成る程、リビングはかなり広く、男子高校生が十人以上居てもなんとか収まる。 「ちょっと待っててな」  進藤が二階へ駆け上がり、直ぐにバタバタと戻って来た。 「ジャーン!新作だぜぇ」 自慢気に掲げて見せつけたのは、今迄まともに見たことがない、過激なパッケージ。アダルトビデオだった。 「とか言って、昨年の発売だろ?」 ぱっ、とパッケージを奪った河合が混ぜっ返す。 「しょうがねーだろ!今時、俺らじゃ18禁なんて買えねぇんだから、兄貴のお下がりなんだよ」 「だよなぁ。俺もこないだ、身分証明書みせろ、って言われて諦めたもんなぁ」 見慣れぬDVDに硬直する俺をよそに、皆興奮状態だった。  やいのやいの言いながら、DVDを再生する。 俺は更に衝撃を受けた。 奇声としか思えない声をあげながら、派手に動く裸体の女性。はっきり言わせてもらうと、気持ち悪い。
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