現実

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翌日、事務所では慌ただしく業務に追われていた。 怜さんは事務所に入ってから長時間、ずっと電話で話をしていた。 相手は日本人ではないようで、何語だろうか、知らない言葉で話しているため、内容は意味不明だった。 戸志呂さんはずっとパソコンと向かったまま、かれこれ何時間になるだろう? しきりに画面を見ては、顎に手をあて、うーーーんと唸っている。 そんないつもと状況の違う中、もちろん私も事務所で仕事をしている訳だけど。 私だけは二人と違って、時折ぼんやりと、あれからリョータくんどうしたかな~?などと、仕事以外のことを考えたりしていた。 そんな中、怜さんが突然大声を上げ、椅子から立ち上がった。 「よしっ、やったぞ!商談成立!!」 その顔は喜びに満ち溢れている。 「さすがは社長、おみごとです!」 戸志呂さんもすぐに立ち上がると、怜さんに向け、称賛と拍手を送った。 二人は互いに肩を叩き、喜び合っている。 一体なにがそんなに嬉しいのだろう。 横で見ている私は、理解に苦しむただの傍観者でしかなかった。
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