事件

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「いいなー、私にもそういう人現れないかしら・・・」 佐久間さんが羨ましそうに話しかける。 でも、私は何も言い返すことなどできない。 確かに二人の言っていることは事実だ。 でもそれは半分だけで、残りの半分は嘘なのだから。 だからと言って、「これは本当は偽装結婚なの」なんて言える訳がない。 二人の熱い視線に見つめられ、ますます私の心は複雑になるばかり。 そんな思いとは裏腹に、二人は祝福ムード一色。 異常に盛り上がっている。 「とりあえず仕事をしましょう、仕事を」 何とかこの話題から逃げたくて、私はそう言ってみたものの。 すぐにやってくるだろう昼休みに、私は今から怯えていた。
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