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「お疲れ様」
怜さんはそう言うと、車のドアを開け、車内から姿を現した。
スーツ姿が、夕焼けにとても映えてたまらなくかっこいい。
思わずその姿に見惚れてしまう。
でも、どうしてここに?
私が驚いていると、怜さんは掌をさっと車の中へ向け、「どうぞお乗りください」と言った。
言葉に従い私が車に乗り込むと同時に、ドアがバタンと閉り、
そのまま車は夕陽を背に静かに走り出した。
「アヤ姫これ」
運転中の怜さんが、小さな紙袋を私に差し出してきた。
「何ですか?」
見ると袋には、携帯ショップのロゴが。
どうやら中身は携帯電話のようだ。
「携帯がないと困るよね。俺もアヤ姫と連絡取れないと困るから」
お礼を言うと、私は怜さんからその袋を受け取った。
でも、なんか嬉しくない。
怜さんの呼び方がまた「アヤ姫」に戻っているのが引っ掛かる。
私は無意識に深いため息をついていた。
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