私の同居人はケモノ耳―短編―

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ぺた…ぺた…ぺた…ぺた…… 不気味な足音。誰かが、裸足で歩き回っている。 ぺた…ぺた…ぺた、ぺた、ぺた、ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた 振り返る。 黒髪で真っ青な顔の女性が腹這いで近付いてくる。 裸足じゃない。あの女には、下半身がない。 血まみれの手が床を叩いて音を鳴らす。 女が近付いてくる。   私 ノ …  脚  返  セ!! 真っ赤な掌が、足首を掴んだ! ――きゃあああ!! 「「ぎゃああああああ!!」」 夏と言えば、オカルトだと思う。 春や秋、冬に見ても良いけれどやっぱり夏に見た方が盛り上がるような気がする。 学校の七不思議、曰く付きのトンネル、廃れた病院、呪いの人形。 定番ものも面白いし、ちょっと変わったものも新鮮味がある。 オーバー過ぎる程の演出も、他のドラマでは受け入れられなくてもオカルトものなら受け入れられる。 「ああ!もう!ミオ、タロうるさい!」 相変わらずテレビでは男女が下半身のない女に追いかけ回されて絶叫しているけれど構わず照明のスイッチを押す。 パッと部屋に明かりが戻る。急に明るくなった事で眩しさを覚えた。 「だ、だだだ、だってぇ…!脚返せって!!」 ペタッと耳を伏せて、尻尾も脚の間に隠したタロ。 がくがく震えながら見上げる潤んだ大きな瞳からは既に涙が零れていた。 その隣にいるミオに至ってはテレビに釘付けではあるがタロ同様震えているし、心なしかいつもより顔色が悪い。 そんなに怖いなら見るなって。 「あれは作り話!フィクション!そんなに怖がる事な…」 「うぎゃあああああッッ!!」 「ひぎゃーッ!!!」 上半身女性が今度は天井からぶら下がっていた。 …途中を見ていないから経緯がわからない。 それを見たミオが絶叫して、そのミオの悲鳴に驚いてタロが絶叫する。 ピタッと寄り添って震える二匹。 いや、だから、そんなに怖いなら見るなって。
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