私の同居人はケモノ耳―短編―

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照明をつける。 真っ青になって震える二匹と尻を撫でる一匹は無視して片付けを始めた。 広げっぱなしのDVDを片付けていると横から手が伸びてくる。 「リイ。」 「…面白かった。」 ぱちん、ぱちんと蓋を閉める音に被ってはいるが言葉はしっかりと私の耳に届いていた。 「今度、一緒に借りに行こうか。」 「別に、いいけど。」 ぉ、お前の為なんかじゃないからな! とテンプレート通りの発言を投げつけて、真っ赤な顔のリイは逃げるように部屋に戻っていった。 ……可愛いなあ…。 「ほら、アンタ達も部屋戻って寝なさい。」 「えー!?ヤダヤダヤダヤダ!モモ、繭子とイイことするんだもんっ」 「却下。」 モモの首根っこを掴んでポイッとリビングから追い出す。 リビングを出たところでレオに出くわしたからレオに任せてきた。 リビングに戻れば何故かまだ座ったままの二匹。 「…私もう寝るからね?」 目の前に仁王立ちになって声を掛けると二匹の顔が勢いよく上がる。 既に号泣中のタロとちょっぴり泣き顔のミオ。 「ヤダヤダ!繭子ちゃん置いていかないでぇ…!」 うわーん!と泣きながら足にしがみつかれる。 私がコンだったら容赦なく蹴り飛ばしていただろうなぁ…。 気付けば反対側からもしがみつかれ身動き取れない状態になっていた。 腰が抜けて動けない。 動けたとして一匹で寝るのが怖い。 …子供か。 そういえば実家の近所にこんな奴らいたなあとか思いながらべりべり二匹を引き剥がして避難する。 「私はちょっぴり怒ってます。」 「繭子ちゃん…?」 「楽しみにしてたのにうるさくて集中出来なかったしモモは私の尻撫で回してるし。」 「モモのは俺らの所為じゃないんだけど…。」 「なので、私は寝ます。」 キョトンと理解出来ていない二匹に向かって満面の笑顔。 「お休み。タロ、ミオ。」 ぱちっ、と照明を消す。 ぎゃああ!とか繭子ちゃああん!とか聞こえてきたけど無視して部屋に入る。 しっかり鍵をかけてベッドに潜る。 今度見るときはリイと二人だけにしようと決意して、私はゆっくり眠りに落ちていった。 おしまい。
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