序章

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 リュックサックを背負い眼鏡をかけた、いかにも『オタク』と呼ばれる見目形だ。  男性は、自分が話の話題となっていることも知らずに本を読んでいる。  やがてガタガタと動いていた電車が止まり、二人の女子高生はその男性にチラチラと視線を送りながら電車から降りていった。 〈恥の文化〉とはよく言ったものだ。ほんの少しでも他人と違うことをすると笑われ、陰口を叩かれる。  日本人は恥をかきたくないために、周りの人間と同じように生きようとする。こんなことをずっと続けていたら、大衆社会に呑まれていくいっぽうだ。  そんなことを考えながらやっと目的の駅に着き、電車を降りた。これから始まるであろう大イベントに、はたまた、1月ゆえの寒さに身を震わせながら改札口に向かう。  新たな世を創造する為に――。
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