第二章 一線

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 それにしても、と付け足した白いハットの男は、地面を指差し、話を続ける。 「……いやー、私はてっきり、落ち込んでもうここには戻って来ないかと思っていたが~。まだやりたい事があると? ここで?」  目を輝かせながら陸奥は答える。 「は、はい! 僕がこの世に存在する価値は、この場でしか見出だせないんです。それが分かったから、また戻って来ました」  白いハットの男は、ウンウンと頷きながら少し間を空け、やがて口を開けた。 「なんでも、聞いたところによるとー、あれからずっとDi以下で、任務をしていたそ~だね」 「……は、はい。あれを機に自分の力の無さを再認識することが出来たと思います」 「そうか~。……ま、失敗から学べることもあるってことだなー」  急に目つきが変わり、続けて言った。 「……だが、陸奥君。分かっているよな」  何かを思い出すように、陸奥の視線が右斜め前を向き、少し身震いをした。それにより、傾いた眼鏡のズレを直す。 「……はい。こ、この任務では絶対に、失敗はしません」 「宜しい。…では始めようか」  白いハットの男は、にやっと笑う。 「Ci任務、心してかかるように!」
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