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黒沢の言葉を遮ったその声は、電話から発せられたものと全く同じだった。声が聞こえて来た方向に顔を向けると、店内に備え付けられている柱の奥から、久しい顔がニョキっと現れた。
「オーイ。こっち、こっち。黒沢」
やはり間違いなかった。電話がかかってきた時は、何かの手違いかと思っていたが、あの柔和な雰囲気を醸し出せる人間は、あいつしかいない。だが、何か様子がおかしい。彼から暗い影のようなものを感じる。以前にはなかったはずの、剣呑な雰囲気が……。
一歩、二歩と足を前に運ぶにつれ、抱いたその感情が、やはり杞憂では無いことに黒沢は気づいた。彼の顔には、少なくとも黒沢が彼と同じ時期に同じ空間――つまりは同じ高校時代を共に過ごしていたその時――とは異なり、顔に、もっと限定するならば目に、小さな異変があったのだ。
両目が膨れて盛り上がり、眼球が真っ赤だった。まるで、思う存分泣きに泣いた人間の瞳のように。
こちらがテーブルの前に着くやいなや、それまで座っていた彼が突然立ち上がり、屈託のない笑顔を向ける。だが、その笑顔の裏にも少し暗い影を感じた。
何かある。それ以外に、今まで連絡のなかった高校時代の友人から、突然電話があるとは思えない。
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