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四室目、この部屋に関しては木製の造りではなく鉄の扉だった。
紀夫は、それまでと同じように、前に押して扉を開けようとした。
開かない。
それならと、紀夫は扉を手前に引いてみる。
ガツっという音だけ響かせたが、結局開かなかった。
この部屋だけ鍵が掛かっているのかも知れない。
見てはいけないと言われると逆に見たくなる、あの懐かしい衝動に駆られる紀夫だったが、どうする事も出来ないと悟ると、四室目をあとにした。
エレベーターを通り過ぎ、五室目。この部屋に鍵は掛かっていなかった。扉を押し開け、中を一瞥する。
紀夫には、一瞬、時が止まったように感じられた。この部屋だけは、他のどの部屋より極端に異質だった。
「な、な、……何だ、アレ」
紀夫の口から吐息が漏れる。過呼吸のように息が乱れる。運動したわけでもないのに動悸が激しくなる。足が震える。恐怖に陥った人間に訪れる全ての現象が紀夫に降りかかった。
この部屋に来てやっと、〈INI〉という機関が、至極不穏当なる場かもしれないと、訝った。
そしてその光景は、紀夫の心胆を寒からしめる。
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