第二章 一線

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 一番最初に目に入ったのは、真正面にある人型の銅像。横がぱっくりと開かれ、銅像の内構造が見える。内側に見えるそれは数本、数十本の針、いや針という単語では事足りない、鋭い凶器がハリネズミのように張り付いている。  次に目に入ったのは、部屋の中央にある椅子。何ら変哲のない普通の椅子。だが、よく目を凝らして見ると、異様な物がひじ掛けに備え付けられている。  それは手枷だった。鉄で加工され、無数のネジが、暗い照明に照らされ輝いている。  椅子の脚、前の二脚にも、あって当然という出で立ちで足枷が付けられていた。  部屋の奥にあるテーブルの上には、ミシン程の大きさがある木製の物体。漢字の口の字を象(かたど)っており、上面だけは鉄で出来ている。その鉄の中央には、指一本入りそうな空洞があり、木製で出来た側面には、車のハンドルのような形をした取っ手が付けられている。  そして最後に紀夫の目に入ったそれ――引き出しを全て取り除いたたんすのような構造で、真上にはギラリと光る刃物。たんすの背の部分にあたる板には、頭がすっぽりと入る円形の穴。側面には右斜め四十五度に伸びる取っ手。  最後に見た物体の名前だけ、臆断するまでもなく、簡単に脳裏に浮かんだ。  それは、――ギロチン。  昔、何かのテレビで見た代物と酷似していた。
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