258人が本棚に入れています
本棚に追加
「な……え、嘘だろ! 後三十分しかねぇじゃんか!」
タイムリミットは三十分。おそらく今世紀最大の過酷な任務になるだろう。
この学校の校門を出て右に真っすぐ。アスファルトで固められた地面の上を進むと、やがて歩行者信号に辿り着く。その先には小さなタバコ屋がある。
そこのおっちゃんが陽気な人で確か三日前にも――っと話が逸れてしまった。
タバコ屋の右手には、外壁が紅白で塗り固められたレストランがあり、そこには狂犬が一匹。もちろん縄で繋がれているが、それでも容赦無く人間様に食ってかかる。それに気を取られず、左に曲がると地下鉄半蔵門線、九段下駅がある。ここまで約十分。
電車に揺られ、四駅目。表参道まで約十分、そして、駅近くにある自宅までは徒歩で約十分。
すべてを掛け合わせて推測するに、この学校から自宅まで計三十分かかる。そうするともう、五時を回ってしまう。と活性化した脳で思考した。
だが今は考える前に行動あるのみ。
黒沢は、急いで教科書やノートを黒い手提げ鞄に入れ、二人で一緒に教室を出た。もしかしたら今日、日本が変わるかもしれないと期待して。
最初のコメントを投稿しよう!