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教室の外にある廊下は光沢で輝き、漂う清潔感を肌で感じとれる。さらに辺りを見回すとゴミ一つ、埃一つ無い。この学校のレベルの高さが窺える。
「外、薄暗くなってきたな」
廊下の途中にある窓の外。確かに薄暗い。あと数十分もすれば、ここら一体闇に包まれるだろう。
田所が発したその言葉を機に、学校内は静まり返ってしまった。暫しの沈黙。
足を前に運ぶ度、キュッキュッという摩擦音が辺りに鳴り響き、その静けさのため、周りに誰もいないことが分かる。おそらく全員帰路の途中か、既に自宅であろう。
ふと右横を見てみると、田所の顔は非常に強張っていてた。焦った表情を浮かべている。……まぁよくよく考えてみれば、その元凶を作ったのは他でも無い自分なのだが。
……と、考えている間も容赦なく進む時計の長針。気持ちばかり焦って体が自由に動かない。まるで、他人に自分の肉体を操作されているようだ。だが、自我はある。一番厄介な状態だなと思いながら、歩くことに専念した。
田所もそれを見てか、だんだんと早足になってくる。
「走れば次の電車間に合うぞ」
「そうだな。少し疲れっけど走るか」
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