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「日ノ本じゃ、皆生まれた日を知ってる訳じゃない。知っていても特に祝う事はない」
「確かにそうですな…」
「だがこの書物に書かれた国では違うんだと。生まれた日を皆知っていて、毎年祝う」
「…それは、凄い事ですね…」
「そう、凄い事だ。そしてこの生まれた日には、贈り物をするのが定番らしい」
「贈り物?」
「そう。プレゼント、ってやつだ」
「ぷ、ぷれぜんと…」
「オフコース!」
基本的に、小十郎も様々な知識を豊富に持っている。政宗が知っている事を小十郎は殆ど知っているだろう。
だが南蛮に関しては話が別だ。小十郎が知らない事は沢山あり、そんな小十郎の知らない事を自分が教える、という事は政宗にとって喜び以外の何物でもないらしい。今も楽しそうな表情を浮かべながら、政宗は更に話を続けた。
「そこでだ。そんな素晴らしい行事を、この国ではやらない、なんて言うのは勿体無いだろ?」
「はあ、まあ確かに…そう、かもしれませんが…」
「だろ?そう思うだろ?そこで、だ。俺達もこの書物に倣って、生まれた日が分かる奴はその日に祝ってやろうと思うんだ」
「な、なんと…!」
正直に言おう。小十郎はこの時、政宗の勢いに押されながらも、突拍子のない提案にとても感動していた。
生まれた日が分かる者を全て祝おうなどと。
――なんと、寛大で心優しい御方なのだろう!
小十郎は内心で大泣きしながら、それを表に出さない様必死に堪えていた。幼い主が今よりも更に幼い頃からお側に居たが、こんなにも心優しく育っていようとは。他の者を思い遣り、考える。正しく当主の鑑ではないか!
ああ、この小十郎、貴方様についてきて本当に良かった…!
そんな事を小十郎が考えている等とは知らない政宗は、黙り込んでしまった彼にこてん、と首を傾げた後、更に話を続けた。
「…で、小十郎。お前はこの案、賛成してくれるよな?」
「…っむ、無論に御座います!この小十郎、政宗様のその様な素晴らしいお考えを反対する訳が御座いません…!」
「そうか、なら話が早いぜ!」
「はい、…ん?話が早い、とは?」
何やら意味合いが変わってくる様な…。至極当然な小十郎の問い掛けに、政宗は胸を張って答えた。
「今日がその、俺の生まれた日だからな!」
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