2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
俺たちは屋上に来ていた。俺と平太は度々、屋上に集まり、まあ…いわゆる出会い、キラキラ輝く素敵で甘酸っぱい出会いを見つけるために様々な手段(今まで実行できたことはないが)を考えるのだ。
手段といってもほとんどが俺のためのものなんだが、それをいつも楽しそうにつき合っている平太はいいヤツなんだか面白がってるんだか…
「んで、なんかいい案でもあるのか?言い出しっぺよ」
俺は平太が座っている横長のベンチに腰から落ちるように座る。
「あ。そういや何も考えてないな」
「………」
「………」
「いや何黙ってんだよ」
「いやアリトが黙ったからだろ」
「おい待て。さっきのは沈黙というツッコミだ。大体何か思いついたから俺を呼んだんじゃないのか」
「なんでなんだろうな」
「おい!」
平太は素知らぬ顔で首を傾げる。
太陽に照らされた整った顔は輝いているがそんなものに俺は惑わされたりなどしないぞ!
「はあ…いつもながらあきれるよ。もうちょっと考えてから行動してくれよ……」
ツッコミが疲れるっての。
平太の無計画さは昔から変わらない。
以前一緒に登校しようとしたらしい平太が家まで迎えに来たことがあった。俺は準備を済ませ玄関を出たんだがドアを開けてビックリ、荷物を持っただけのパジャマ姿の平太が立っていたのだ。
本人曰く「ああ、気付かなかったな」らしいのだが。
いや普通は気付くだろと思うけれど。分かったあとも平然と家に戻っていくし…
まあ無計画というよりも抜けているというか。クールなのにそういうところも多々ある男だ。
「まあこれから話し合えばいいさ。そうだな……まず、良い出会いにはキッカケが必要だ。そしてキッカケには良い場所が要る。いい出会いの場って言われて思い浮かぶものっていったら、まずは学校だろ。
しかし例によって学校ではこれ以上アリトに何も求めちゃいけないから…他はどんなトコがある?」
「なんか淡々と進めちゃってるけどサラッとひどいこと言うなよ!」
「合コン…とか…部活……んー、そんなとこか?」
「流すな!」
なにやら唸りながら平太は空を見上げる。
ならって俺も見上げると飛行機雲の白い筋が青い空に伸びていた。
「あ。バイト……」
平太は斜め上を見ながら呟くと、突然ゆっくりと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!