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それから数日後、彼女は向日葵畑にまた、やって来た。今日は向日葵畑でお昼寝をしに。
昼寝をしていた、そしていつの間に少し距離を置いて葵が向日葵の絵を描いていた。
ちょっと、驚いたが葵は梨乃が起きたことに気付くと優しい言葉を掛けてくれた。
「こんにちわ♪梨乃さん。ここ、ポカポカして暖かいですよね?でも、そのままだと日に焼けてしまいますよ。本当に向日葵が似合う人ですね。」
そんなことを言われたのは初めてだった。
「......そうですか?」
「向日葵が良く似合うよ。」
恥しくてその後まともに顔を見ていられなかった。
それからほぼ毎日のように二人は向日葵畑で逢っていた。普段の彼女なら絶対に行こうとしないだろう。だけど、何故だか初めて逢った気がずっとしなかった。ある日、彼は喫茶店の方にやって来たのだった。
「カラ~ン コロ~ン」
「いらっしゃいませ。」
梨乃の明るい声が店内に響いた。そして、中に入って来たお客が葵だったので少し驚いていた。
「......あれ、葵さん?いらっしゃい。」
「こんにちわ、梨乃さん。お爺さんいらっしゃるかな。伯父さんに頼まれたことがあったんだけど......。」「お爺ちゃん?あっ、今ね、ちょっと買い物に行ってるだけだから、すぐに戻って来ると思うよ。」
そう言いながら、水を出した。今、喫茶店は二人だけだった。梨乃にとって男の人と二人きりになるのは不安の元だった。結構、平気そうな顔をしているけど怖くて堪らなかった。黙って、コーヒーを作っていた。そのうち、雨が降って来て梨乃は怖くて、しゃがみこみ、机の下で声を上げずに震えていた。耳を塞いで聞こえないようにしていた。
葵は梨乃の姿が見えなくなるとどうしたのか気になって、近くまで様子を見に行って彼女の姿を見つけ、声を掛ける。
「......梨乃さん、大丈夫ですか?雷、嫌いなんですか?」
彼女は静かに頷いたので、彼はそっと、自分の方に引き寄せて抱き締めた。
「......ごめんね。でも、こうしていると落ち着くと思うから......。」
最初は抵抗しようとしたけど、温かくてすごく落ち着いていた。そして懐かしい匂いがしてとても落ち着いた。だけど、葵は違った。本当はもっと、強く抱き締めたかったけどそれが出来なかった。傷付けてしまいそうで、本当の自分のことを曝け出すことすら今は出来なかった。
それは、居心地が良くて梨乃は眠ってしまった。
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