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「......梨乃、梨乃。そろそろ起きなさい。」
それは祖父の声だった。目を覚ますともう夕方に、雨はすっかり止んで外には真っ赤な夕焼け空と虹が広がっていた。
「・・・えっ、今何時?あれ、葵さんは?」
「もう、17時だよ。もしかして葵君ていうのは、先、私が帰って来た時にいた子か?その頃なら用事が済んだからって大分前に帰ったぞ。梨乃に宜しくて言っていた。あの子は以前、どこかであった気がするんだがな......?」
そう言って祖父は悩んだ。
「もう、帰っちゃたんだ・・・・・・。せめて帰る前にお礼を言いたかったのに・・・・・・」
小さな子供の様に少し寂しそうに言う孫娘を見て、そんな顔久々に見たと御爺さんは思った。すると急に思い出した先程の少年のことを
そろそろ帰宅しようとする孫娘に祖父は一つアドバイスをした。
「梨乃。小さい頃撮った写真が収められているアルバムを探してご覧。そこにお前と母とその母の友人夫妻で撮った写真があるはずだ。それを見てご覧。」
「どうして?」
その問いかけにそれ以上は答えてはくれないが、祖父は悪戯ぽっく笑うので、何かあると思い、早々と帰宅した。広い家の中、家の明かりはなく寂しさが広がる。お帰りと言ってくれる人はいない。静けさの残る家だった。誰もいないけど、ただいまと言って、家に入り、鍵を閉める。そして、目的のアルバムのある書庫へと向かったのだった。
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