見合い

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 それから数日後とんでもないことになるとはこの時は思いもしなかった。 それは土曜日の夜、父が珍しく早く帰って来たと思ったらとんでもないことを言い出したのだ。 「梨乃、突然だがある会社のお得意様が息子とお前を見合いをさせたいとおっしゃってな。悪いが明日付き合って欲しい。」 父の突然の発言に驚いた。 「......えっ、見合い......まだ、私には早いよ......。私、葵さんと明日会う約束が......。」 「梨乃、葵さんてまさか沙菜香さんの子供の......彼は駄目だ。とにかく、駄目だ。今後、一切会うのを止めなさい!」 娘のの口から葵の名が出ると父は何故か動揺したような様子を見せる。 「どうして?酷い。私はお父さんの物じゃない!私の自由でしょ!」 細やかな反抗だが、頬を叩かれ、理由を聞いても教えてくれなかった。父の言うことに逆らうことが出来ずに結局、父の目を盗んで彼にメールで急用が出来たことを告げ、次の日の見合いに望んだが気分が重かった。父や親戚はあまり梨乃のことを好きじゃないのかもしれない。 家の面子の為にお嬢様を演じている。だから自分の意見もほとんど通らない。外出をほぼ禁じて、一人であの家の部屋に閉じこもる事を強要され続け、いつしか心を閉ざしていた。 そんな彼女を心配し、祖父達は、自分達が始めた喫茶店でお手伝いをすることで、色んな人とのコミュニケーションを取らせようとしていた。父は面白くないが、逆らうことは出来なかった。 彼女にとって、少ない居場所だった。                                                  
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