1人が本棚に入れています
本棚に追加
向日葵畑に着くと彼女は他に誰もいないことを確認して歌いだした。
この場所は母や祖母達が昔、連れて来てくれてのだが、今はその母も病院で入院中だった。祖母は今日は友達と遊びに行っていた。母に逢うのが怖くて会いに行ない。
「~♪」
一瞬、強い風が吹き、髪は吹き乱れ、帽子が飛ばされた。その帽子を急いで追いかける。
取れそうで取れない帽子、母に会いたくても会いに行けない自分の気持ちに似ていた。
やっと手が届いた時、バランスを崩した。
「キャー。」
「危ない。」
悲鳴と重なる声、一瞬誰かに受け止められた感じがしたが倒れた。でも、痛くなかった。
何でだろうと思いながら体を起こすと自分の下敷きになっている人に驚いてすぐに離れた。
「キャー、ごめんなさい。」
彼は笑って言った。
「大丈夫だよ。気にしないで、君こそ大丈夫?」
梨乃に触れようとしたが梨乃が目を瞑って怖がっていたので触らずに言った。
「ごめんね。そうだ、これ君の帽子だよね?」
先、取ったはずの帽子は彼の手の中にあった。帽子を受け取った。
「......ごめんなさい。私は全然大丈夫です。あの、怪我しませんでしたか......?」
彼女はびくびくしながら言うと彼は優しい微笑みで返した。
「大丈夫だよ。良かった怪我が無くって。......ここの向日葵は本当に立派だね。こんなに
きれいに咲いているのは初めて見たよ。」
「......えっ、本当ですね。私の祖父がこの向日葵畑を作ったんですよ。私が好きな花なんです......。」
最初のコメントを投稿しよう!