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彼女の手を取って亘から放した。亘の父は店の有り様に何も言えなくなっていた。
「父さん、どうしたんだよ。」
「......葵君、お帰り。梨乃ちゃん家の馬鹿息子がまた、迷惑掛けたみたいだね。本当にごめんね。」
亘の父は亘の頭をポカッと一発殴って謝った。
「......あっ、いえ、おじさんのせいではないですよ。それに本当にいい加減にして欲しいです。あのお爺さんに買い物頼まれていたんですが......。」
「ああ、聞いてるよ!ちょっと待ってて!!」
そう言って奥に取りに行った。
「......ハァ、何か疲れた。もう、5時過ぎてる?!どうしよう、向日葵を少し持って行こうと思ったのに!!」
梨乃は溜息をつたいたかと思えば、今度は一人でショックを受けていた。
「梨乃さん、大丈夫?俺、帰り送って来ますよ。こんなに遅くに一人で居たら危ないですから。」
「でも、悪いですよ。」
奥から亘の父は戻って来た。
「梨乃ちゃん、これだね。送ってもらいなよ。葵君は家の息子よりしっかりしているし、全然安全だし、護身術の心得もあるだから送って行ってもらいなさい。」
結局、送ってもらうことになった。それは小さな花のブーケだった。
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