小さな火種

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友達を切り捨てた私は足早に帰り道を急ぐ。 自然と早歩きになっている。 いや、気付けばいつしか全力疾走になっていた。 「ただいまぁ!」 全力疾走で家に到着した私は全力で玄関のドアを開いた。 廊下の向こうからパタパタと駆ける音が近づいてくる。 ご主人様が帰ってきたら喜んで駆けてくる子犬。 ツヤツヤでさらっさらの黒い毛並み、上目遣いで少しウルウルさせた瞳は寂しかったから? この子犬を見るが為に私は疲れた体に鞭打ち、息も絶え絶えに全力疾走したんだから! 「お帰りなさい、紗智さん!」 ぬはぁっ! その笑顔反則ですから! そんな上目遣いでウルウルした目で見つめられた上にその笑顔だと? 撫でて良いですか? 撫で回して良いですか? 私の心を鷲掴みにした子犬、もとい沖田総司君は今にもふるふると振るう尻尾が見えてきそうです。 そんな事を思っていると沖田さんは下から心配そうに私を覗き込む。 ちよっ、止めて! そんな間近で、眉を下げてしゅんなんて顔されたら鼻血が、鼻血が…… 鼻血通り越して吐血してしまうわ! 「大丈夫ですか?」 沖田さんはウルウルした瞳でじっとこちらを見ている。 ぐっ! 落ち着け!落ち着くんだ紗智! 激しく鷲掴み……否、握りつぶされたこの心を落ち着かせるんだ! ゴンゴン…  気付けば玄関のドアに頭ぶつけ、自分で自分を戒めてました。 うん、これで萌えた心もさっぱり落ち着いた。
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