RF-0 少女の想い

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目の前に広がる光景は廃墟となった繁華街らしき都市の残骸。 昼間だというのに太陽はその神々しい姿を見せずに、暗く澱んだ雲に覆われていて辺りは不気味だった。 それに加え建物の鉄筋は剥き出しになり、アスファルトの道路はひび割れていて突起した部分さえある。 荒れきった街に静寂が包みこむ。いや、僅かに吹く風の音があるか…? そんなどうでもいいことを考えてしまう、今はそんな事を考えている暇はないというのに。 「こちらガルム1、作戦ポイントに到達。開始時刻は13:00。」 「ガルム2、了解。」 無機質な声が響き、その声に対して返答する。口を開いた後、右上にあるディスプレイを見て時刻を確認する。 緊張しているのか、それとも放心しているのか。わからないままただ操縦桿を握る。 いま自分がいる場所。それは戦争の兵器「ライディングフィギィア」のコックピット。 通称RFは全長25mほどの大きさで、頭部・胸部・腕部・腰部・脚部に分けられる。コックピットは胸部にある。 コックピットには人が1人座れる座席、正面に頭部のカメラ視点からの映像が見えるディスプレイ。左右には通信機器や武装の切り替えや精密機器が並ぶ。そして上部には機体制御のためのスイッチがあり、コックピットから出る際に押すものもある。 今、自分が乗っているRFには標準装備として実弾対戦車バズーカが右手部にTR拡散シールドを左腕部に装備している。 ここまでは教わったことばかり。いつも必死に勉強して頭に叩き込んで良かったと心から思う。 が、今からは教わったことのない未知の領域。どれだけ機器の場所を覚えても、いくら筆記試験で満点を採っても…ここからは関係ないのかもしれない。 気持ちを鎮めさせるために深呼吸をする。そして、時刻をもう一度確認する。 時刻は12:59。あと1分で作戦が始まる。あと1分で――戦闘に入る。 そう心の中で念じていると表示していた数字が変わってしまった。 「ガルム隊、作戦開始。」 隊長の開始の合図を境に、私はRFで荒れ果てた街の上空を飛んだ。  
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