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俺は扉の鍵を閉めた。
「ちょ、離しなさいよ!私は美霧と遊んでる場合じゃないのっ!」
切菜が俺の腕から逃れようとしているが、妹同様無意味な行動だ。
「さっき俺の家に来たいとか言ってただろ!?ってか力弱くなったんじゃね?」
昔の切菜なら俺くらいの男、瞬殺できたはずだが。
「う、うるさい!私は帰ります!」
そう言いながら俺の手を強引に引きはがそうとしてくる。
「おやおや~?胸の脂肪を捨ててまで鍛えた身体はどうなったんでしょうか~?」
「黙れマカダミアナッツ!貧乳は正義って誰かが言っていたわ!」
マカダミアナッツって…そんな一瞬で頭を過ぎる言葉か…?
「ほぅほぅ。ではその正義とやらを見せてもらいましょうか~?」
爪を立ててこないのは優しさなのか、嬉しいのかどっちなんだ…?
「いい加減にしろー!」
「ぐほぉ!!!」
切菜が右足で男の勲章を蹴ってきた。
俺は反射的に勲章に両手を持っていく。
「え!?ちょ、ごめんなさい!そんなつもりじゃ…」
切菜が俺の手から逃れ、あたふたしながら謝罪の言葉を発する。
「もう…無理…死ぬ…」
心なしか呼吸困難になってきた気がする。
「私は女だから分からないけど、そこって死ぬほど痛いの!?」
最早謝罪の言葉すら発してくれなくなった。
「ハァー…ハァー…」
今の俺は別の意味で興奮している。
何だか意識が朦朧と…
「大丈夫!?救急車呼ぼうか!?」
「いや…大丈夫だ…」
勲章を蹴られて病院送りなんて、みっともないにも程がある。
「お、お詫びに今晩作ってあげるから!ほら!この紙に書いてあるように今晩妹さん居ないんでしょ!?あっちに貼ってある紙を見る限り、ご両親も居ないみたいだし!」
「助かる…」
ふぅ。少し痛みが引いてきた。
今更だが、あの痛みは痛いという表現でいいのだろうか。何か複雑なダメージを受けるんだけど。
「切菜…その暴力的な性格は直した方がいい…自分を守る為だとしてもな…」
「…そうね。」
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