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「(…10時、か)」
店から出て腕時計を確認する。外は当然、すっかり暗くなってしまっていた。
二次会はパスした。
帰宅を告げる際に「えぇー」、と女性陣から落胆の声が上がったが、対して男性陣は「おぉ、そっか、またな」っと非常にあっさりした挨拶で別れを告げ、結局男女共々、さっさと次の店へと移動していった。
僕が持ち帰りしなかった事に安心したような表情が透けて見えて、本当、吐き気がした。
合コンの最中、恥ずかしげも無くべたべたとくっついてきた女の妙に甘ったるい香りも同時に思い出す。
「(気持ち悪い)」
どいつもこいつも、品定めをするように僕を見るのだ。
その視線が、酷く気持ち悪い。…これだけは未だに慣れなかった。
頭痛がする。恐らく、酒のせいだけでは無いだろう。
「最悪、…」
低く呟こうと、聞き咎める他人は居なかった。
僕の声は静かな空間に、あっという間に霧散して、消えた。
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